【弁護士が解説】「婚約破棄の慰謝料」の相場と請求方法とは?

幸せな結婚をするつもりで相手と婚約していたのに、何らかの事情で「婚約破棄」されてしまったらショックですよね。実は婚約破棄でも、慰謝料が請求できるケースがあるようです。今回は「婚約破棄の慰謝料」の相場と請求方法について、アディーレ法律事務所の鳴海裕子弁護士に解説してもらいましょう。

■「婚約」・「婚約破棄」ってどんな状態を指すの?

◇「婚約」とは?

「婚約」とは、将来結婚しようという男女の約束です。婚約自体は法律で定められているものではありませんが、婚約破棄になった際に法律で保護されるためには、客観的に見て「婚約が成立していたこと」を認めてもらう必要があります。それは、「将来の婚姻成立に向けて誠実に努力していたかどうか」という観点で見られます。

◇口約束・同棲だけでは、法的には「婚約」ではない!?

ただ交際している男女が「将来結婚しようね」と言い合っているだけ、ただ同棲しているだけでは、婚約とは言えません。たとえば、婚約指輪を渡す・結婚式場を予約する・お互いの両親や友人に結婚の挨拶や報告をする・結納を交わすなど、結婚に向けた具体的な行動をしていることが必要です。

もっとも、これらすべてを行っていなければ婚約が認められないというわけではなく、それぞれの事情を見て総合的に判断されます。たとえば、プロポーズの際に婚約指輪を渡さなかったからといって、それだけで婚約が認められないということはありません。このように、2人で結婚に向けて具体的に行動していたにもかかわらず、結婚の約束を破るのが「婚約破棄」です。

■婚約破棄されて、慰謝料が請求できないケース・請求できるケースとは?

婚約破棄された場合、慰謝料が請求できるケースと請求できないケースがあります。それは、「婚約破棄の原因が自分にあるか相手にあるか」によって判断されます。

そもそも、「婚約破棄」自体は、裁判所の判決などを必要とせず、お互いが合意すればできます。しかし、正当な理由がないにも関わらず一方的に破棄することは違法という判断になり、損害賠償責任を負います。

以下のような理由が婚約破棄の「正当な理由」です。自分がこれらの行為をしていた場合、相手に婚約破棄をされても慰謝料請求はできません。

・婚約後に、ほかの異性と浮気をした

・婚約後の失業など、大幅に経済的事情が変化した

・婚約後に重度の精神病などに罹患した

・婚約後に、前科などが発覚した

・合理的な理由なく、婚姻を先延ばしにした

・婚約後に、虐待や暴行暴言を行った

※東京高判昭和48.4.26判例時報706-29

・婚約後に、社会的常識を逸脱した異様な言動をした

※福岡地裁小倉支部昭和48.2.26判例時報713-108

・結婚式直前に、無断で出奔(行方不明)した

※大阪地判昭和41.1.18判例時報462-40

一方、「正当な理由」とは判断されない婚約破棄の理由の代表的なものは以下です。これらの理由で相手から「婚約破棄」をされた場合は、正当な理由とはならず違法とされるので、慰謝料を請求することができます。

・婚約相手が自分のことを好きじゃなくなった

・自分と性格や価値観が合わなかった

・親族に結婚を反対された

「慰謝料はいらないから結婚してほしい」と思う人もいるかもしれませんが、法的に2人を強制的に結婚させるといった手続きは、残念ながらありません。

■「婚約破棄の慰謝料」の相場

「正当な理由」がない婚約破棄の場合は、結婚式場のキャンセル費用や結納金の返金などのほか、「結婚を不当に破棄されたことに対する慰謝料」を請求できる場合があります。

慰謝料は、婚約破棄されたことに対する精神的苦痛をお金で賠償してもらおう、というもの。精神的苦痛は目に見えない損害なので、金銭に評価する場合はそれぞれの事情に即して検討する必要があります。そのため、具体的な相場金額というものはありません。

これまでの婚約破棄の慰謝料を請求する訴訟を参考にしてみると、慰謝料として認められる金額相場はおよそ50万円から、高くても200万円程度です。もっとも、前述した通りケースバイケースなので、50万円を下回る事案も、200万円を超える事案もあり得るのです。

■「婚約破棄の慰謝料」の正しい請求方法

婚約を不当に破棄されて、慰謝料を請求したい場合、以下のような手順で請求が必要です。

(1)証拠の保全・収集

(2)内容証明郵便の作成・送付

このとき、相手がすんなりと慰謝料を支払ってくれれば問題ありませんが、相手が婚約破棄を認めず慰謝料の支払いを拒否する場合には、調停や訴訟で争わざるをえません。

調停や訴訟においては、「婚約していたこと」「婚約破棄が不当であること」を証明する必要があります。そのため、それらを証明する為の証拠が必要になります。たとえば、結婚式場の予約資料や契約書を取得する、親族や友人への挨拶や報告について親族や友人の証言を集める、DVの診断書を取得するなどです。

内容証明郵便による請求後に、証拠の保全・収集をしようと思っても、証拠がすでに消滅しているなどの理由により、証拠がもはや保全・収集できないことも多いです。そのため、請求すると決めたら、実際の請求前に可能な限り多くの証拠を保全・収集しておいたほうがいいでしょう。

■逆に「婚約破棄の慰謝料を請求されたとき」の対応法

逆に自分が婚約破棄をして、相手に婚約破棄の慰謝料を請求されている場合には、「婚約破棄に正当な理由があったこと」を主張して立証していく必要があります。

もしも自分が、正当な理由なく婚約を破棄してしまった場合は、一定の慰謝料を支払う義務を免れないと考えます。しかし、たとえば婚約して日が浅いとか、あまり周囲に周知していない、結婚式の会場もまだ予約していないなど、婚約相手がそこまで実害や精神的苦痛を被っていないのではないかと言える場合には、これらの事情を示して「慰謝料の減額」を試みてみることも必要かもしれません。

■まとめ

結婚したあとの夫婦間の問題は、法律やお金が絡むことが多いですが、それは婚約状態であっても同じこと。婚約破棄をした側も、された側も、その状況を真剣に受け止めて考える必要があります。お互いすっきりとした気持ちで次に進むためにも、ぜひ参考にしてみてくださいね。

(アディーレ法律事務所・鳴海裕子)

※画像はイメージです

6/17 18:56 マイナビウーマン

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