■前回のあらすじ
「色鉛筆を盗られた」という友だちの話を聞いて、初めてあの時きみちゃんに本を盗られたのかもしれないということに思い至ったのでした。
三年になると…
きみちゃんは変わらず文武両道で、所属していたバスケ部では一年生の頃からスタメンエース。もちろん後に部長を務めるなど活躍はよく耳にしていました。
そして生徒会長になったきみちゃん。
本当にすごいなぁとただただ感心していた私でしたが…。
それは中学卒業間際の三学期。
クラスメイトだった生徒会長副会長の松田君が、卒業式の生徒代表挨拶の代役をするかもしれないという話題でクラスがざわついていました。
理由は、生徒代表の挨拶をする予定のきみちゃんが受験に失敗して学校に来ていないからだと言います。
その話の中で、きみちゃんの家庭がエリートで、そんな環境の中きみちゃんが育ったことを知りました。
家族や周囲の期待を一心に背負って挑んだ受験。そして挫折。
きみちゃんが第一希望に落ちたと聞いてみんなと同じように私も驚きました。
それと同時に同じ歳の同じ受験生として想像しただけでゾッと背筋が凍り、脳裏にはあの「うたの本」のことがよぎりました。
きみちゃんが盗んだ私のうたの本。
まだ小学一年生だった私ときみちゃん。
物をなくすなんて当たり前の年齢でした。
でも、当時からきみちゃんはそんな失敗が許されないというプレッシャーの中で生きていたのかもしれません。
もちろん、どんな理由があろうと人の物をとるのはいけないことですが、あの頃より少し成長した私はまだ小学一年生だった頃のきみちゃんが、どんな気持ちでうたの本をとったのか考えると胸が締め付けられました。
あの時、私がまわりの大人に言っていたら何か変わってたのかな
そんな途方にないことが頭を過ぎては消えていきました。
そして迎えた卒業式当日。
卒業生代表として壇上に上がったのは…。
※登場する人物の名前はすべて仮名です。
5/26 8:00 ウーマンエキサイト
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